埼玉県支部2010年春季講演会報告

2010年3月13()午後1時30分から埼玉県支部2010年度春季講演会が如水会(一橋大学同窓会)のご好意により講師に独立行政法人労働者健康福祉機構理事長、元労働事務次官伊藤庄平氏(社団法人 如水会会員 昭和41年一橋大学法学部卒)

をお招きして冨士原支部長はじめ支部会員30名、如水会他一般参加の方14名を合わせ44名と多数の参加を得て埼玉県労働会館において開催されました。

今回の講演では

「未来への不安と勤労者の心」―少子高齢化時代を乗り越える提言

と題して 有史以来初めてと言って良い人口減少の局面を迎えた日本の現状と将来、特に高齢化の進展にともなう課題とその対応策について多年にわたる労働行政の中枢としてのご経験を基にご講演いただきました。

現況分析:15歳から64歳までの社会を支える層-−生産年齢人口―は2025年迄に1,300万人余が2055年までには3,800万人余が減少する。しかも65歳以上の高齢層が著しく増加してゆく中での人口減少である。目下働き盛りの3.3人で一人の高齢者を支えている社会が限りなく11の構図に近づいてゆく。

ある調査によれば「将来に不安はない」と考える勤労者の割合が1980年代には50%を越える年もあったのに今では20%台と半減してしまっている。

課題:上記の通り日本的な雇用慣行などの変化と相俟って将来への不安や漠然としたストレスが高まっている。その具体的な表れの一つが心の病の問題でありこの課題解決が今後の日本にとっての重要課題である。

企業の対応を切り口にした対応策:労働行政のご経験に加え現職(全国に展開する労災病院の経営)を通じて培われたご見識も含め専門的見地からまた古典の引用も加え詳しく且つ判りやすくご講義いただいた。

短歌に見る時代の変化:

明治43年:石川啄木         平成17年 松村由利子

こころよく我にはたらく仕事あれ   こころよく我にはたらく仕事あれ

それを仕遂げてしなむと思ふ     ああ何という驕りかそれは

主要対応項目を次に掲げる。

      労働力不足の対策:高年齢者、女性、フリーター(若年者)の就業率向上

     技術進歩率(生産性上昇率)の向上を基幹とした一人当たりGDPの増大

      若者への提言→企業経営者、年配者の責務:仕事の喜び、誇りを持つ→これを実現できる組織の改善、
   熟練を通じて高い生産性を実現できる企業経営の推進。

      社会的アイデンティティの獲得:年齢に関わりなく社会的な存在として自分を説明できること

具体的な動きとして長期雇用のメリットの見直し、専門性を生かした高齢者が働きやすい仕組みの前進なども上げられ講義を締めくくられた。

多くの蔵前工業会会員にとって専門外の内容でもありかつ実務上重要な内容であったこともあり経験を通じた熱心質疑が行われた。引き続き行われた有志による懇親会では「事業仕分け」の裏話などオフレコのためご紹介できないお話も出、盛り上りの裡に会を閉じました。

(文責:企画担当 山口健二(S37)