埼玉県支部 講演会報告

  日時:場所  平成1469()   1300   北浦和労働会館 

  講演 「天然ガス自動車の開発と普及」

  講師   岸田總太郎氏(S35化工)  日本ガス協会、天然ガス自動車フォーラム顧問

  天然ガスはガソリンとの比較で地球温暖化の原因となるCO2、環境汚染を招くNOX,CO,HC排出が少なく、黒煙は殆ど排出されず、
且つ
SOXに至っては全くない。埋蔵量も豊富で、しかもクリーンな石油代替エネルギーとして注目されており、都市ガス業界では、天然ガスの利用の多角化、新用途開発の一環として、天然ガス自動車の普及に約10年前から取組んでいる。
石油依存度の極端に高い運輸燃料のエネルギー源の多様化は、わが国の重要な課題となっており、国の長期エネルギー需給見通しにも
2010年には天然ガス自動車100万台の普及を折り込んでいる。わが国においては、戦前、天然ガスが採取出来た新潟県、千葉県、及びその近傍の東京方面等でバス、小型商用車、トラック、乗用車など天然ガスの自動車が1000台程度実用化されていた時代があった。しかし、液体燃料の利便性に駆逐され、皆無となった。
その後
LNG輸送技術の進展に伴い、1969年のアラスカLNGの導入が開始され、都市ガスの天然ガス時代が幕を開けた。1984年に東京ガス[]で天然ガス自動車試作第1号が作られ、1986年には市街地走行テストが行われた。大手ガス会社数社が協力し、天然ガス自動車プロジェクトが1986年に(社)日本ガス協会に設置され、天然ガス自動車の本格的普及に向けてスタートした。
技術開発面では、ガス充填設備
(高速充填設備、昇圧供給装置)の開発、自動車メーカーの協力による天然ガス自動車の低公害性の実証、車種バリエーションの拡充、及び天然ガスの安全性の実証等、ソフト面では関係法制度の規制緩和、普及初期の補助・助成措置の獲得等が進められた。その結果現在では全国で天然ガススタンド180ケ所、小型バン、乗用車、トラック、バスからフォークリフトに至るまでの幅広い車種の天然ガス自動車約12000台が走行している状況にまでなった。
それでも
200万台に達した世界のレ ベルからみればこれからの感があり、 2010年の 100万台の普及を目指し、インフラの整備、拡充、並びに自動車メーカーの協力を得て、高効率エンジンの開発を始め、低公害で信頼性、利便性の高い自動車の開発を更に進めて行く事が大切である。

 広範囲で、しかも色濃い中味の講演であったにもかかわらず、約 2時間と言う時間は適当ではなかったのかもしれない。しかしエネルギー問題は、如何なる技術者と言えども必ず直面する時があるであろう。広範囲且つ詳しく書かれた貴重な資料をお配り頂いたので、そちらを勉強して頂ければ、大綱を聞いておられる皆さんは、充分に理解する事ができる筈だ。力の入った講演に感謝申し上げる。


                                                          29 白井 亨記)

 講演中の岸田總太郎氏